施主が本当に建てたかった家(その1)
なんだかたいへん偉そうなタイトルですが、私たち一家3人が程々の家に引越してきてから早くも2ヶ月。いろいろ振り返ってみて思ったことなんかを、これから家を建てる方に向けてちょっと書ける時期になったかなあ、などと思っての暴挙であります。ご笑覧いただければ幸いです。
さて、まず最初にお伝えしておきますと、私たちの程々の家、住み心地的に不満な部分などほとんどなく、たいへん快適な暮らしを送っております。
などと書くと、なに言ってんねんつい最近おもっくそ文句タレとったやんけ上の記事読み返してみろやなどと思われる向きもあるかもしれませんが、だって実際に文句がないものは文句がないのです。
なにが言いたいのかといいますと、建つまでなんだかんだあったとしても、建っちゃえば忘れちゃうことのなんと多いことか、ということ。いや、もちろん私がボケてるという可能性もあるのですが、忘れてても思い出せば腹も立つので、きっとボケてないに違いありません。
さて、私たちの話はいったん置いとくとして、いろいろな建築ブロクなんかを拝見していると、程度の多少こそあれお決まりのパターンがあるような気がしてまいりました。
どっかで見たことあるパターンだけどなんだろうなんだろうと思っていたところ、はたと思い当たったのがこちらのイラストでございます。
妻「なんね、これ」
私「システム開発の現場にありがちなことであります」
このイラスト、元は1970年代のアメリカで作られたものがリニューアルされつづけてこのようになっているもの。絵の内容に関してはいろいろな解釈があるようなのですが、たとえば代表的なものだとこんな感じ。
【顧客が説明した要件】
あのー、アレよアレ。ブランコのあるとやろ? その板ば3枚にしたら丈夫になるやっか? ほいでね、1枚のときよりいろんな乗り方のでくるとやろ? そがん便利なブランコのあったら便利やねえ。うん。
【プロジェクトリーダーの理解】
素人の顧客が言っている意味をイマイチ分かりかね、とにかくちょっと変わったブランコを作ればいいという理解であります。なので、ロープの場所をちょっと変えて終了。もっと突っ込んで聞きたいけど、分かってないと思われるのもシャクだし、営業から無能扱いされるのもムカつくし、そもそも忙しいしね。
【アナリストのデザイン】
リーダーの理解のままでは板が木の幹に当たっちゃって動かないじゃんということに気づき、とはいえ勝手にリーダーの図面を大幅に書き換えると何を言われるか分かったもんじゃないので、とりあえず木の幹をぶった切ってブランコをこげるようにして、それでも木が倒れないようにつっかえ棒を2本渡しております。
【プログラマのコード】
アナリストのデザインからは、木から2本ロープを生やしてその先に板をくくりつけるというコトしか読み取れず、仕方ないのでこのようなモノを作ります。最初はもうちょっとシュッとした物を作った気もしますが、営業やリーダーからああでもないこうでもないと言われてるうちにこんなになっちゃった。知るもんか。
【営業の表現・約束】
営業さんはとにかく豪華に、とにかく快適に、そしてとにかくお客様の夢を壊さないようにというコトを第一に考えて、ブランコの上にソファをくくりつけるコトをお約束。その分お値段もアップですが、それはそれ、これはこれ。あと、現場にブランコってことを伝え忘れてる気がするけど、まあ見りゃ分かんだろ。
【プロジェクトの書類】
当然こんなに二転三転してるプロジェクトですから、議事録なんてあってないようなもの。「そういやあの話どうなってたっけ?」なんて思っても、記録なんてどこにも残ってません。
【実装された運用】
幹に絡みついたロープと板を見た顧客との間でどのようなやり取りがあったのか知りませんが、とにかく修正に修正を重ねて納品されたのは、ご覧のように枝からロープが1本ぶらさがったもの。とりあえずぶら下がって揺られて遊ぶことは可能です。
【顧客への請求金額】
結局手に入ったのは枝からぶら下がったロープ1本ですが、請求書に書かれた金額はまさにジェットコースター級。まあ、これだけプロジェクトが右往左往すれば工数もバカになりませんし、しょうがないよね、うん。
【得られたサポート】
完成後のサポートを約束されましたが、よーく見ると最初から変わってないのは根っこの部分だけ。ので、使い方わかんなくても面倒見てもらえるのはココだけです。
【顧客が本当に必要だった物】
枝からぶらさがったロープを受け取った顧客がよくよく考えて、自分に必要だったのはこのロープの先にタイヤがぶら下がったモノだったと気付いた瞬間。1枚の木の板より丈夫で、いろいろな乗り方ができて、しかも木の板使うより低コスト。なのにどうしてこうなった。
妻「たしかにウチの会社のシステム入れ替えた時もこうなったばい」
私「あるあるですなあ」
妻「で、これがどがんしたと?」
私「いや、コレって家づくりにも当てはまるんじゃないかなあ、と」
妻「どゆこと?」
私「つまりこういう」
妻「あー」
私「システムも家も発注者が素人だし」
妻「うん」
私「その先がめっちゃ分業っていうのもおんなじだし」
妻「たしかに」
えーと、中途ハンパですが、長くなりそうなので次回に持ち越しであります。
次回「施主が本当に建てたかった家(その2)」につづく