薄暗い家をつくる方法(その3)
プライバシーを確保するために窓を半分に減らすという手段に出た私たち一家3人。その代償としてただでさえ暗い程々の家が、よりいっそう薄暗くなることが決定したわけですが、そもそも薄暗い人間なので一向に気にしません。
妻「ちょっとちょっと」
私「どしたの?」
妻「一緒にせんで」
私「なに言ってんだCoccoとか聞いてるくせに」
妻「ひー!」
私「(私も聞いてるけど)」
と、いや、まあ、それはどうでもよくて、話を最初に戻しましょう。そもそも最初考えていた間取りからなぜか反転した程々の家。その理由をご説明いたします。
私たちの土地は南北を道路に挟まれたカタチ。とはいえ、南面の道路は2〜3mほど低くなっているので、直接面しているのは北側道路のみとなります。その北側道路を挟んで家が2軒建っていますが、かたっぽは空き家。でもって、東西を空き地と小さな畑に挟まれ、南側が先日の写真のようにどーんと抜けてるといったロケーションです。
というわけで、最初は次の2点をベースに建物配置のプランを考えておりました。
① 一番抜けてる南東方向に大窓を向ける
② 交通量がやや多い南面道路からなるべく建物を離す
まあ、ごくごく当たり前の考え方だとは思いますが、その考え方にしたがって建物を配置したところ、こんな感じになりました。
確かに上の2点はクリアしているのですが、問題は2つ。キッチン横の窓がお向かいさんの玄関と正対してしまうこと。それと、東側のお隣さんの様子が丸見えになってしまうトコロであります。
お向かいさん問題については、窓と道路の間に目隠しを作ればいい話ですが「じゃあなんでわざわざココに窓開けた?」的な疑問は拭えません。
さらに、お隣さん問題については、窓からお隣さんの敷地までがどえらく遠いため、目隠しをつくるとしたら窓のすぐ前にせざるを得ません。とすると「じゃあなんでわざわざそんなトコに窓開けた?」的な疑問が拭えません。
この問題、結構イロイロ悩んだのですが、どうしてもプライバシーの問題と眺望を両立することができませんでした。やっぱり南東の眺めは捨てがたいのです。
と、そんな悩みを解決してくれたのがお向かいのご主人。土地でうんうん考えてたらお声掛けいただきました。
向「どうしました?」
私「いや、家の向きをどうしようかと」
向「ちなみに、この土地のどのあたりに建てられるのですか?」
おっと、ここでちょっと気づきましたが、初期プランの位置に家を立ててしまうと、お向かいさんからは「なんでわざわざウチの前に?」的な印象を持たれてしまいかねないことに気づきました。
実際はお向かいさんのほうが、グラウンドレベルで2mほど高いため、目の前をまったく塞いでしまうようなコトにはならない(と思う)わけですが、まあ、そのへんは考えたほうがいいかも。
私「いや、この西の端に建てようと思ってたのですが」
向「ほほう」
私「眺めは最高なんですが、ちょっと上手くいかなくて」
向「確かに眺めはいいですよねえ」
私「で、そちらのお宅からだと眺めのジャマになってしまいますから(喰らえいい人ビーム!)」
向「おお、そんなことまで考えていただいて!」
などと、このように思いっきりドヤ顔で悩んでるふりをしていたトコロ、思わぬヒントを頂くことになります。
向「確かに南東は眺めがいいですけど、南西側は冬になると富士山が見えるんですよ」
私「マジっすか!?」
確かに言われるとおり、そちらは富士山の方角。で、たしかに間を遮るモノは何もありません。そう、南東が抜けて見えるとか言ってますが、南西方面も十二分に抜けてるのです。違いとしてはこんな感じ。
南東:3キロほど田んぼが続いて、その奥がこんもりとした小山
南 :1キロほど田んぼが続いて、その奥がこんもりとした小山
南西:3キロほど田んぼが続いて、その奥が住宅街
そう、フツーの感覚で言えば南だろうと南西だろうと十二分にヌケヌケなのであります。だったら、なにも南東に向けることにこだわらなくてもいいんじゃないかな、と。
で、ぼちぼち話してると、ちょうど南西の方角に日が沈んでいきます。キレイとかキレイじゃないとかではなく、気がつくとぼんやり眺めてしまうような夕日。
はるか奥の方には確かに住宅街が見えますが、この時にはもうそんなことこれっぽっちも気にならなくなっていました。で、すぐに帰って図面をイロイロこねくって、できたプランがこちら。
見たくない方に背中を向けるという私の人生そのままに間取りを左右反転。ついでに建物も西から東に寄せて、ちょっと傾けてみました。これでプライバシーの問題は完全に解決。
もちろん南東方面の眺望や、南面道路がちょっと近くなってしまうというデメリットはあるものの、誰にも気兼ねなく暮らすという点では、はるかにメリットが大きいと考えてのことでございます。
というわけで、コレが間取りが反転していた最大の理由。窓を考えるだけだったはずが意外と大事になり、家の位置も変わってしまったので地盤調査もやり直すという悲しい事態が発生したものの、とりあえず富士山がみえれば万事OKです。
さあ、次で窓編は最終回。もうちょっとお付き合いいただければ幸いです。
次回「薄暗い家をつくる方法(その4)」につづく