愛と欲望の設備選び(床暖房編)
延々と続けてきた設備シリーズも、とりあえず今回で最終回。残った大物の床暖房を選択いたします。ていうか、こんなちっちゃい程々の家でこんだけいろいろ考えるということは、フツーのサイズの家を建ててる方はいったいいつ寝てるんでしょうか。
むやみに広大な土間スペースを確保してしまったため、そちらに床暖房を設置することとなってしまった私たち一家3人。しかし、実際設置するにあたり、いくつか考えなくてはならないコトが出てまいりました。
① 床暖房の種類
② 設置面積
床暖房にはどうやら3つの種類があるようです。大きく分けて「電気型」と「温水型」、でもって電気型はさらに「電熱線ヒーター式」と「PTCヒーター式」のそれぞれとのこと。
この中でいちばん効率がいいのはガス式温水型とのことらしいのですが、私たちの程々の家が建つ場所は都市ガスどころか水道すらない千葉県の大僻地。かろうじて電気は通っているためオール電化にすることは確定しているので、ガス式は選択肢から外れてしまいます。
じゃあ同じ温水型でも電気で動かすヒートポンプタイプでいいじゃんというお話もありますが、今回に限って考えてみると、実は温水式の意味ってないんじゃないかなあ、と。
温水型がフツーの電気型に比べて効率がいいという理由の一つは温めるものの比熱。フローリングのような熱容量の少ないものを温める場合、それそのものだけを温める電気型だとつまりホットカーペットと大差ないのに対し、温水型なら熱容量の大きい水を温めることで、つまり床全体を暖めることができるわけであります(おおざっぱ)。
と、ここで考えなきゃいけないのは、我が家の床暖房はフローリングの下じゃなくて、土間タイルの下に設置されるということ。どんな意味があるのかというと、タイルはもちろん、その下地のモルタルやコンクリートも、フローリングに比べて遥かに熱容量が大きいのです。
上のリンクを参考にすると、コンクリートもタイルも、フローリングの木材に比べて比熱が約2倍。でもって、さらに熱を蓄えられる厚みが5倍くらい。てことは、単純計算でフローリングの10倍も熱を蓄えられるコトになります。
と、これだけではあまりにも嘘くさいので、実際のスケールで計算してみましょう。ものすごくざっくり、木の比熱を1000、コンクリートやタイルの比熱を2000として、ちょっと見てみましょう。
・フローリング(12mm)+下地合板(15mm)
(12+15)×1000=27,000
・タイル(10mm)+下地コンクリート(100mm)
(10+100)×2000=220,000
おおお、やっぱりリアルに蓄熱容量が10倍近い。てことは、わざわざ蓄熱容量を増やすために水を使わなくても、電気の力で充分に床全体を暖めることができるのではなかろうか、と。
てことで、今回は初期費用も安いし、水漏れの心配もないし、たぶん十分に暖かくなるであろうという楽観的な予測のもと、電気型のPTCヒーター式床暖房を採用することにいたしました。
選択したのはこちらのピアサーモという製品。まあ、特にメーカーにこだわりがあるわけでもないので、ぶっちゃけテキトーです。どうせこんな商品、ドコのでも大差ないし。きっと。
と、方式が決まったところで、今度は設置面積を考えます。というのも土間エリアは下の図のように、玄関土間、キッチン、パントリーと大きく3つのエリアに分かれているのです。
この中で、パントリー部分はそもそもずっと人がいることを考えていない上、こんなトコ暖めたら冷蔵庫の効率は落ちるは床に食料置けないわで意味がないので、考えるべきは玄関土間エリアとキッチンエリアであります。
このピアサーモ。基本的には幅270mmのシートを並べて設置していくわけですが、つまり上のエリアに敷き詰めるとするとこんな感じになります。
キッチンエリアは設置がマストなわけですが、問題は左の玄関土間エリア。もちろん常に人がいるわけでもなければ、基本的には玄関のため、ここで寝っ転がったりとかいうのも大変考えにくい事態ではあります。だって石だし。
もし玄関土間エリアに設置するとしたら、狙いはひとつ。ココをでっかい蓄熱暖房と見立てて、部屋というか家全体を暖かくするというもの。上で計算した蓄熱容量なんかを見るとやってやれないことはなさそうですが、問題はコストであります。
で、ピアサーモのウェブサイトを見ると、1日8時間運転した際のシート1枚あたりの参考電気代が載っております。今回使う予定の2700mmのシートの場合、1枚あたり1ヶ月330円。ということは、上のプランだと9枚なので2970円。でもって、さらに一条工務店のアレを見習って1日中つけっぱなしにすると考えると8910円。
実際にはつけっぱなしにした場合、ゼロから温度を上げる作業がなくなるため、もうちょっと電気代は安くなる方向かと思われますが、うーん、どうしよう。
妻「土間も全部入れたかねえ」
私「えっ、それはまたどうして」
妻「だってタイルに床暖房入れると遠赤外線が出てカラダの芯から暖まるらしか」
私「ほ、ほんとだ……」
妻「やけん家族の健康を考えて玄関土間にも床暖房は必須ばい」
私「ていうか遠赤外線協会って……」
と、まあこのようなやり取りがあり、思わぬカタチでコストアップが受け入れられることに。実際には玄関土間の一番左エリアは、靴箱を置いたり原付を置いたりするスペースになるため1枚減らして6枚。キッチンエリアの2枚と合わせて、合計8枚のピアサーモを2つのエリアに分けて、タイルの下に埋めることとなりました。
こうやって分けとけば遠赤外線蓄熱暖房計画が看板倒れに終わったとしても、キッチンの下だけ暖めるということもできますし、まあ、保険ですね保険。
さあ、これでやっと設備類を選び終わった私たち一家3人。あとはもう建つのを待つだけと言いたいところですが、あともうちょっと決めることがあったりしたのです。体力気力ともやや限界に近づいてる気がしなくもありませんが、まあ頑張ります。
次回「薄暗い家をつくる方法(その1)」につづく